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2016年12月21日水曜日

【緊急提言!】 ふるさと納税に取り組む自治体の方々へ!(2016/12/21)

みなさん、こんにちは。

先日、こんな記事を見つけました。

藤沢市がふるさと納税導入へ」(@niftyニュース、2016年12月10日)

ふるさと納税自体は(通常の寄付として)もともとできたわけですが、来年度の途中から返礼品の提供を始める、ということですね。

記事によると、受け取る寄付金の金額よりも出ていく寄付金控除の金額の方が大きくて、その差が約2億8000万円とのこと。

藤沢市の地方税による税収が800億円くらいで(藤沢市の平成27年度の財務諸表はこちら(PDF注意))、2億8000万円という数字は限定的ではあるものの、いくつかの事業が吹っ飛ぶくらいのインパクトのある規模とは言えそうです。

総務省さんのふるさと納税ポータルサイトで公表されている各自治体に対するアンケートへの藤沢市の回答(PDF注意)を見ると、「返礼品ありきの制度として広まっていて、本来の目的を果たしているのか疑問」とか「自治体に負担をかけずに国が主導すべき」とかなりご不満の様子。

入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多いのですから、当然ではあるのかも知れません。

ここから転換を図るということで、大きな決断をされたのかなと。

そう思ったのですが!

どうもまだまだ気持ちの切り替えがスパッとできた、という状況ではないようです。

というのも、上記記事によると、返礼品について「返礼品合戦から一線を画すため、観光や収穫体験など「体験型」の返礼品を検討」とのこと。

あの・・・、一言申し上げても良いでしょうか。

藤沢市さん、その「返礼品合戦」に対する妙なこだわり、捨てちゃった方がよくありませんか?^^;

「藤沢市出身で今は他の都市に暮らしている方が、出身(ふるさと)の藤沢市に寄付して懐かしい地元の特産品をもらったり、もらったその特産品を周囲に配ったり」といったごくごく普通のことができなくなっているような?

というわけで、今日はふるさと納税の制度についての私なりの考えを勝手に書いてみたいと思います!(事情も知らずに勝手なことを!とお思いになるかも知れませんが、素人の戯言だと思ってご容赦くださいませ。)



1.自治体はふるさと納税の制度とどう向き合うべきなのか


私なりの結論から書かせていただきます。

地方自治体の方々は、上記記事で書かれている「本来は〜市に税収として納められる額」という発想は捨てて、「すべての住民がふるさと納税の制度を使って自己負担2000円で済む限度額までの寄付を行う」ということを検討のスタート地点とした方がいいと思います。

だって、制度のことを知っていれば、使わないはずがない制度なのですから。

実際、ここ数年の寄付金額の伸びはすごいことになっています。


まだまだ伸びると思います。

そして、上の前提に立った場合、ふるさと納税の制度は最大で住民税の2割が控除される制度なので、住民税による税収が最大で20%減ることになります。

住民税は6:4で市民税と道府県税に割り振られますから、市民税としては最大で12%減りうるということです。

藤沢市の場合で言うと、「市税の内訳及び構成比(平成28年度予算)」(PDF注意)によれば、税収の約4割、約300億円程度が市民税による収入とされています。

つまり、現状の2億8000万円というのは市民税収入の1%未満で、これが最大で30億円くらいまで拡大しうる、と。

一気に最大値まで拡大することはないでしょうが、昨年度の数倍になることは大いに考えられます。

このことを前提に考えておかないと、税収が突然大幅に減ってしまって市の財政が立ち行かなくなるなんていう恐ろしい事態もあり得ます。

最悪のケースを想定して、「ないもの」と思って対策を考える必要があるように思うのです。

2.どんな対策があるのか


上述の「すべての住民がふるさと納税の制度を使って自己負担2000円で済む限度額までの寄付を行う」という前提に立った場合、市財政へのダメージは非常に大きいです。

どんな対策があるでしょうか。

この市財政へのダメージに対抗する手段は次の3つしかないと思います。

(1) 市民がふるさと納税の制度をなるべく活用しないようにする
(2) 市民に自分の居住する市にふるさと納税してもらうようにする
(3) 市民以外の方にふるさと納税してもらう

出ていくお金を減らすか、入ってくるお金を増やすかしかないので、当然ですね。

これまで、藤沢市を含む多くの自治体は(1)、つまり、なるべく市民に知らせずに制度を使う人が増えないようにしてきた、というのが実態だったと思います。

が、2015年度にはふるさと納税枠が約2倍に拡大され、確定申告の手間を減らすべくワンストップ制度が創設されるなど、国としてふるさと納税がもっと普及するように取り組んでいます。

さらに、最近ではさとふるさんやふるなびさんのような民間の仲介サイトが増えてきて、そのような民間事業者さんによるテレビCMを見ない日がないくらいになってきています。

そんな中で(1)の対策をしようとしても、それは無理というものです。

なので、もう住民にはふるさと納税の制度をフルに活用してもらって、それでも大丈夫なような政策、つまり(2)または(3)に舵を切るしかないと思います。


3.市民からの寄付と市民以外からの寄付のどちらを志向すべきか


では、(2)と(3)ではどちらを志向した方がよいでしょうか。

私は、最もプライオリティが高いのは(2)の「市民からの寄付」、続いて(3)の「市民以外からの寄付」のうち、元市民だった方、最後にその他の方々、という順番かなと思います。

理由を説明します。

寄付をしてもらうまでには、(1) まず気づいてもらって(Attention)、(2) 関心を持ってもらって(Interest)、(3) 寄付したいと思ってもらって(Desire)、(4) 実際に寄付してもらう(Action)というプロセスを経ることになります(いわゆるマーケティングのAIDAモデルです)。

この最初のステップ「気づいてもらう」のは結構大変なことです。

総務省さんの資料(PDF注意)によると、全国には約1700もの市町村があるからです。

普通はその1700の中に埋もれてしまって、気づいてもらうことすらできません。

が、住民や元住民であれば、縁もゆかりもない市町村よりも一歩リードすることができます。

実際、私もふるさと納税をする際に、現在の居住地である藤沢市や過去の居住地の自治体がどんな返礼品を提供しているかをチェックした記憶があります。

このアドバンテージを使わない手はありません。

「1700分の1」の人よりも、「1分の1」(現在の住民)や「数分の1」(元住民)の人を最初のターゲットとするのが得策だと思います。

その上で、市とゆかりのない方をどこまで上積みできるか、ということかなと思います。


4.返礼品は何を用意すべきなのか


次はその方々に興味を持ってもらい、寄付したいと思ってもらわないといけません。

ここで忘れてはいけないのは「自己負担2000円で済む限度額」の存在と「ライバルの自治体」の存在です。

限度額がなければ、どんなに強力なライバルがいても、「地元にも寄付してあげよう」となることもありますが、実際には限度額があって強力なライバルたちがいるので、そのライバルたちに競り勝たないといけません。

なお、1700の市町村のうち、多くは気づかれてすらいないので、この段階で脱落しています。

競り勝たないといけないのは、その脱落した多くの市町村ではなく、ごく一部の「ライバルたち」です。

「ライバルたち」は何をしているか。

さとふるさんやふるなびさんのようなサイトのランキングを見ると分かりますが、特産品のようなお手軽なものが上位に来ています。

ふるさと納税をする側の立場で考えたら、当然です。

「体験型」のような手間のかかる(時間を拘束しますし、交通費などの+αの出費もかかります)ものより、「特産品」のように送ってもらってすぐに消費・使用できるものの方が、明らかに楽です。

楽かどうかは、欲しいと思ってもらえる(「Desire」してもらえる)かどうかに大きく影響します。

面倒なものはなかなか欲しいと思ってもらえませんから。

もちろん、「体験型」の返礼品が欲しいという層もいるとは思いますので、それをラインナップとして持ってもよいと思いますが、併せてお手軽なものも用意しないことには、「ライバルたち」に勝てません。

そこで競り負けてしまえば、結局、市民税の市外への流出を止めることはできないのではないかと思います。

5.「返礼品合戦」は悪いことなのか


少し前まで、ふるさと納税の返礼品としてプリペイドカード等が贈られていた時期があるようです。

自己負担2000円で換金も可能なプリペイドカードなどが数万円分も貰えるとなれば、誰もがそれに選んでしまいますし、もらえる額面の大きい自治体に寄付が集まってしまいます。

確かにそんな「返礼品合戦」は意味がないと思いますし、単に税収が減るだけになってしまいます。

ただ、平成27年4月1日の総務大臣通達(PDF注意)で、換金性の高いプリペイドカード等を返礼品にすることを禁止する要請が出されて以降、現在はそういった極端な例はなくなり、その自治体にゆかりのあるものが贈られるようになっています。

私には、今の状態の「返礼品合戦」が悪いこととは思えません。

確かに、各自治体が「返礼品を金額に換算したときにいくらに相当するか」を競うだけなら、プリペイドカードと同じ問題があることになります。

でも、実際には、それだけで競われているわけではないと思います。

例えば同じ牛肉でも、牛の飼育方法を工夫するなどしたとても美味しい牛肉に厳選して特徴を出すなどすれば、量が少なくても選んでもらえることもあります。

お米だって同じコシヒカリでも、量が少なくても農薬を減らしてつくっている方を選ぶ人もいると思います。

つまり、どれだけ特色ある特産品を地域として育んでいるかがポイントなのであって、ふるさと納税の制度がそのような自治体間の競争を促すとすれば、むしろ地方の活性化に繋がる「よい政策」と言えるのではないかと思います。

平たく言えば、ふるさと納税の制度は「頑張る自治体にお金が集まる制度」だと思うのです。

これって、悪いことではないように思います。


6.藤沢市の場合


冒頭に紹介させていただいた記事によると、「返礼品合戦から一線を画すため、観光や収穫体験など「体験型」の返礼品を検討している」とされています。

そして、「制度導入後の寄付金額を約2500万円と試算」とも書いてあります。

・・・。

もちろん、予算の都合など色々な事情はあるのだろうと思います。

ただ、「返礼品合戦」を悪いものと位置付けて、「自分たちはそんなことはしない」とすることで、市の特産品で正面から戦おうとしないことを正当化しようとしているだけに見えてしまいます。


ちなみに、ふじさわ観光名産品協議会さんのサイトを見ると、藤沢市の特産品がこんなにあったのかと気づかされます。

個人的には、十分に戦えるラインナップだと思います。

ちなみに私のイチオシは、飯田牧場さんのカップジェラートです。


これ、無添加で本当に美味しいので、まだ試していない方はぜひ一度、ご賞味を!

飯田牧場さんに行っても買えますが、FujisawaSSTの近くのJAさがみ「米ディハウスくげぬま」さんでも取り扱っていらっしゃいます。

って、脱線しましたね。閑話休題。


「体験型」で藤沢市民でない方に藤沢市に来ていただいて、お金を落としてもらうのもいいと思います。

でも、上述したように「体験型」は手間がかかるので、他の自治体の提供するお手軽な「特産品」ではなく、藤沢市の「体験型」をわざわざ選んでくださる方がどれだけいらっしゃるか。

ますます市民税の税収が減ってしまわないかと心配です。


というわけで、冒頭の記載に戻ります。

藤沢市さん、その「返礼品合戦」に対する妙なこだわり、捨てちゃった方がよくありませんか?

その上で、市の特産品をより強いものに育て上げて、「返礼品合戦」にも勝てるようにしていきませんか。

藤沢市の特産品なら、十分に戦えると思います!

それでは、また。


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